コンサル資料の作り方:PowerPointで実践する5ステップ
外資コンサル出身の創業者が、PowerPointでコンサル品質のスライドを作る手順を解説。ストーリーラインの固め方からアクションタイトルの書き方、多くの人が夜遅くまで消耗する整列・フォーマット工程の乗り越え方まで、実務でそのまま使えるステップを紹介する。
新卒コンサルで最初に作ったデッキが返ってきたとき、マネージャーがタイトルスライドに書き込んだコメントはひと言だけだった。「で、ストーリーは?」。棒グラフをピクセル単位で揃えるのに2晩使った後だった。その下にある中身は、まだ生煮えの分析の寄せ集めのままだった。「スライドを整える技術」と「そもそも何かを主張するスライドを組み立てる力」の間にあるこのギャップこそ、多くの人が「コンサルっぽい」スライドをPowerPointで作ろうとして詰まる場所だ。
本稿は、1年目の自分に渡したかった手順書のつもりで書いている。白紙のPowerPointから、パートナーレビューに耐えるスライドに至るまでのステップ、そしてそのプロセスの中で最も時間を食うのに最も見返りが少ない工程がどこかを、具体的に示す。
コンサル資料が「普通の資料」と違う理由
一般的なビジネス資料の多くは、口頭発表の添え物にすぎない。話し手が説明する内容を、箇条書きが少し補強するだけだ。一方コンサルの資料は、単独で読まれることを前提に作られる。メールで転送され、発表者の説明抜きで目を通す人がいることが常に想定されている。この一点の制約から、コンサル資料特有の作法のほとんどが説明できる。情報密度が高いのに整然としたレイアウト、1スライド1メッセージへのこだわり、そしてタイトルをトピックではなく文章として書く習慣だ。
最後の一点が、意外と見落とされがちなポイントだ。「Q3実績」というタイトルはトピックにすぎない。「Q3売上は12%増加したが、粗利圧迫により今四半期中に2つの価格判断が必要」というタイトルは主張になる。戦略ファームではこれを「アクションタイトル」と呼ぶ。数あるコンサル作法の中でも、これは投資対効果が突出して高い習慣だ。なぜなら、シェイプを一つ置く前に自分の論点を明確にすることを強制されるからだ。
ステップ1: PowerPointを開く前にストーリーラインを固める
若手が最も陥りやすい失敗は、いきなりPowerPointを開くことだ。ストーリーライン、つまり上から下まで読めばそれだけで議論全体が伝わるアクションタイトルの連なりは、1枚のスライドを作る前に存在していなければならない。これはマッキンゼーでバーバラ・ミント氏が体系化した「ピラミッド原則」の実践そのものだ。結論を先に示し、それを支える少数の論点を並べ、各論点を根拠で裏づける、という構造である。
これは文書でもホワイトボードでもいいので、1スライド1文の箇条書きとして先に書き出すべきだ。パートナーやクライアントがそのタイトルだけを読んで結論を理解できれば、ストーリーラインは機能している。理解できないなら、後からどれだけスライドを磨いても意味がない。混乱を磨いているだけになる。
ステップ2: デッキ全体の骨格を組む
ストーリーラインが固まったら、次は標準的な構成に落とし込む。
- プロジェクト名・日付・想定読者を記したタイトルスライド
- 議論全体を1枚に凝縮したエグゼクティブサマリー
- 各論点を裏づけるデータドリブンな本編スライド群(中規模のプロジェクトなら数十枚に及ぶことも珍しくない)
- 結論と次のアクションを明記したクロージングスライド
- 本編には入れないが根拠として必要な補足資料を収めたアペンディックス
核となる主張に不可欠でない「面白い情報」は、迷わずアペンディックスに送る。「念のため」と本編に残しておくと、15枚で済むはずのストーリーが、誰も最後まで読まない40枚のデッキに膨れ上がる。
ステップ3: 1枚1枚、常に同じ順番で組み立てる
個々のスライドを作るときは、グラフから作り始めるのではなく、次の順番を守る。
- まずアクションタイトル。 下に何かを置く前に、文章として成立する結論を先に書く。タイトルは、そのスライド自体が持つミニピラミッドの頂点にあたる。
- メッセージに合ったレイアウトを選ぶ。自分が使い慣れたレイアウトではなく、伝えたい内容に合ったものを選ぶ。比較なら表、推移ならグラフ、構造やフレームワークなら箱と矢印、プロセスならフロー図。メッセージに合わないレイアウトを無理に当てはめることは、差し戻しを食らう二番目に多い原因だ。
- タイトルを裏づけるデータだけを載せる。 上のタイトルを支えない数字は、脚注に押し込むのではなく、そもそもアペンディックスに送る。
ステップ4: 実は時間を最も奪うのはここ―整列とフォーマット
「コンサル資料の作法」を語る記事の大半が触れない部分がある。しかも、実際に夜の時間を最も奪う部分でもある。中身が固まった後、箱をグリッドに揃え、フォントサイズを統一し、すべてのグラフで配色ロジックを揃え、違う時間帯に違うメンバーが作ったスライド同士の余白を合わせる作業が残っている。
PowerPoint標準のグリッド線・ガイド機能(表示タブから設定できる)は助けにはなる。5枚を超えるデッキなら有効にする価値はある。ただし、それは本質的な問題を解決してくれない。この工程は、標準機能の範囲内では近道のない純粋な手作業だからだ。シェイプをピクセル単位でずらし、余白を測り直し、誰かが表に1行足しただけで全体がずれて組み直す。中身を詰める作業は分析だが、この工程は製図に近い。優秀なアナリストほど、思考自体は終わっているのに、クライアント訪問前日の深夜までこの工程で残業する羽目になる理由がここにある。
ステップ5: 送る前の2つのチェック
次の順番で2つチェックする。
- タイトルだけを読む。 すべてのアクションタイトルを別文書にコピーし、それだけを上から下まで読む。文の連なりとして議論が成立していればデッキは機能している。破綻があるなら、フォーマットをどう直しても埋まらない。ステップ1に戻る。
- 6秒スキャン。 スライドごとに、6秒だけ時間を区切って要点を探す。その時間内に目が要点に着地しないなら、直すべきは中身ではなく視覚的な優先順位だ。多くの場合、タイトルがグラフの凡例や文字だらけの本文と注意を奪い合っている。
Advisioが役に立つ場所
Advisioを作ったのは、まさに上記のパターンを何度も見てきた、そして自分でもやってきたからだ。ストーリーラインと分析は夕食前に終わっているのに、チームはステップ4の箱の整列作業のために深夜1時まで残っている。AdvisioはMicrosoft AppSourceで公開されているPowerPointアドインで、コンサル品質のレイアウトをPowerPointの中で直接生成する。つまり、ステップ1から3までの本当に頭を使う部分を終えた後、ステップ4の機械的な整列・フォーマット作業のために夜を失う必要がなくなる。ステップ1・2・5、つまりストーリーライン・構成・チェックの部分は依然として自分でやる必要があり、判断力が求められるのもそこだ。Advisioが担うのは、誰もが嫌がるのに、どの方法論の教科書にも載っていない「間の工程」だ。
結局いちばん効くのは何か
この記事から一つだけ持ち帰るなら、アクションタイトルの習慣にしてほしい。下に何かを置く前に、すべてのスライドタイトルを、根拠を伴った完全な文章として書く。それだけで、テンプレートや配色ルール、整列テクニックのどれよりもスライドの質を上げる。思考を先に済ませることを強制するからだ。そしてそれこそが、「コンサル資料っぽい見た目のデッキ」と「実際にコンサル資料として機能するデッキ」の分かれ目になる。