PowerPointでガートナー ハイプサイクルのスライドを作る方法

作成者: Advisio編集部|2026/10/04 23:00:59

ハイプサイクルのスライドを、適当なS字カーブに技術名を貼り付けただけで済ませると、ほぼ確実に2つの問題が起きる。1つは、5フェーズを均等な幅で区切ってしまい、誰もが見慣れた「ハイプサイクルらしい」形にならないこと。もう1つは、市場スキャンの結果「過度な期待のピーク期」に技術が8個、「幻滅期」に1個しかないという不均等な分布になった瞬間、ピーク期のラベルが重なり合って読めなくなることだ。結論から言うと、曲線は折れ線グラフやSmartArtの既製カーブではなく、頂点編集で「スムーズ化」した1本のフリーフォーム図形として描き、x軸は5等分ではなく各フェーズの慣例的な比率(黎明期・ピーク期は狭く、幻滅期はやや広く、啓発期が最も広い)に合わせて幅を決め、1ゾーンに技術が密集したら直接ラベルをやめて番号マーカー+凡例行に切り替える。以下、具体的な手順と、つまずきやすい2箇所を順に説明する。

完成イメージ: 何を作ることになるのか

手順に入る前に、作るものの中身をはっきりさせておきたい。「ハイプサイクルのスライド」と一口に言っても、実務で戦略チームやBizDev部門が本当に必要としているのは、左から右へ1本の連続した曲線が走り、x軸に「Time(時間)」、y軸に「Visibility(可視性)」というガートナー自身が使うラベル(「期待度」と訳しても意味は通じる)が入ったものだ。曲線の下には5つのフェーズのゾーンがあり、薄い破線の縦区切りで分けられ、フェーズ名(黎明期・過度な期待のピーク期・幻滅期・啓発期・生産の安定期)は曲線の上ではなくx軸の下に小さく配置する。市場スキャンで評価した技術(その数は毎回きれいな数字にはならない)が、自分の該当フェーズの高さに合わせてマーカーとして曲線上に乗り、それぞれにラベルが付く。

ダウンロード販売されているテンプレートのほとんどが力尽きるのは、まさにこの最後の部分だ。テンプレートは4〜5個のプレースホルダーマーカーを曲線上に均等間隔で配置して完成としているが、今期のスキャンで6個の技術がピーク期に集中し、幻滅期には1個しか残らないことまでは、テンプレートの作者には予見できない。実際の市場スキャンはむらがあって当然で、関心が特定カテゴリーに集中すること自体が「過度な期待のピーク期」の定義そのものなのに、均等な分布を前提に作られたスライドは、実データを入れた瞬間に崩れる。

手順1: 曲線を描く前に各フェーズのゾーン幅を決める

最初に手を付けるべきはx軸のレイアウトであって、曲線そのものではない。よくある失敗は、x軸を5等分(各フェーズ20%)にしてしまうことだ。5つのラベル付きセクションを最速で配置する方法ではあるし、ダウンロード販売されているテンプレートの大半がこの作り方をデフォルトにしている。しかしこれでは、一目でハイプサイクルだとわかる形にならない。5等分にすると幻滅期がピーク期と同じ幅になり、本来はカーブの中で最も長い啓発期が、最も短いはずの黎明期と同じ幅に押し込まれてしまう。

代わりに従うべき慣例はこうだ。黎明期は狭いままにする。ゼロから初期の盛り上がりまでの立ち上がりは速いからだ。過度な期待のピーク期も狭いままにする。ピーク(頂点)は定義上、短期間しか続かない。幻滅期は、他の2つのフェーズよりも明確に幅を取る。ピークからの下落と、幻滅が実際に定着する底の部分の両方をカバーするからだ。啓発期はカーブ全体の中で最も幅の広いセグメントにする。ある技術が実用化の道筋を一つずつ確立していく過程で、四半期単位ではなく年単位の時間がかかるのがこのフェーズだからだ。生産の安定期は残りの幅に収め、通常は幻滅期と同程度の幅になる。

実務上は、20-20-20-20-20ではなく、おおよそ10-12-18-40-20という比率の分配になる。ピクセル単位で正確に測る必要はない。まずPowerPointのスマートガイドか、後で削除する仮の長方形を使って、この比率に近いおおよその位置に4本の縦ガイド線を引き、「5等分」という思い込みではなく、そのガイド線に合わせて曲線とフェーズラベルを組んでいく。

手順2: 曲線は1本のフリーフォーム図形で描く(チャートは使わない)

ここで間違ったツールに手が伸びることが多い。1つ目は、PowerPoint標準の折れ線グラフや散布図で「時間に対する可視性」を適当な数値点でプロットするやり方だ。チャートは既定で点と点を直線でつなぐし、スムージングを有効にしても、軸の目盛線・データマーカー・凡例システムが付いてきて、図形を1から描くより取り除く手間の方が大きくなる。2つ目は、SmartArtの「基本的な循環矢印」系のプロセス図で、これは均一な弧しか描けない。立ち上がり→ピーク→下落→長い上昇→安定、という左右非対称な形を表現する仕組みがそもそも備わっていない。

正しいツールは、挿入 > 図形 から選ぶ「曲線」または「フリーフォーム」で、挿入した直後に右クリック > 「頂点の編集」に入る。頂点は、形の節目になる位置に置く。おおよそ: 開始点(ベースライン付近)、立ち上がり途中の点、ピークそのもの、幻滅期の底(ここは開始点より低い位置に置くこと。開始点と同じ高さに揃えてしまうと、ハイプサイクルらしい形にならない)、長い上昇の中間点、安定期の始まり、終了点。6〜7個の頂点があれば十分で、それ以上増やすと不要な揺れが出やすい。

頂点を配置したら、1つずつ右クリックして「平滑点」になっているか確認する。「頂点」や「直線点」のままだと角が立つ。平滑点にすると、頂点の両側に対称なハンドルが現れ、ドラッグしてその頂点前後の傾きを調整できる。ピーク部分のハンドルを短く引けば鋭い頂点に、長く寝かせれば丸みのある頂点になる。よくある失敗は、頂点を動かした後にPowerPointが設定を「頂点」に戻してしまうのに気づかず、ピークや幻滅期の底という、本来は最も滑らかであってほしい箇所に角が残ってしまうことだ。曲線のどこかに意図しない角があれば、まずその頂点を右クリックして種類を直す。チェンジカーブのスライドを手描き風の滑らかなS字に見せているのもまったく同じ頂点編集の技法で、崩れ方(意図しない頂点がそのまま角になって残る)もまったく同じパターンだ。

曲線全体は1つの図形のまま保つ。「立ち上がり部分」「下落部分」「上昇部分」を別々に描いて後から組み合わせたくなるが、1本のフリーフォーム図形であれば、色を変えるのも、スライドのレイアウトが変わって位置を動かすのも、来年また頂点を触るのも、作業対象が1つで済む。

手順3: フェーズの境界線を引き、ラベルは曲線の上に置かない

手順1で決めた5ゾーンの境界4箇所に、薄いグレーの破線の縦線を入れる。参照用の補助線であって、データそのものではないので、コントラストは低めにする。5つのフェーズ名はx軸の下に小さい文字で配置し、それぞれ自分のゾーンの中央に揃える。「過度な期待のピーク期」は文字数が多く、ピーク期のゾーン自体が狭いことが多いため、1行に収めようとして文字サイズだけ縮めるのではなく、2行に折り返す方を選ぶ。他の4つのフェーズ名とサイズが揃っていない方が、2行になるより目立って不格好に見える。

この手順でよくある失敗は、フェーズ名を曲線の上、各ゾーンの上部の空いたスペースに直接置いてしまうことだ。その段階では空いているので問題なく見えるが、手順4で技術ラベルがまさに同じ曲線上の空間を必要とする。フェーズ名と技術ラベルが同じ帯域を取り合うことになり、先に置いた方が後から来たラベルに隠れてしまう。フェーズ名はx軸に固定し、曲線の上の空間はスキャンのたびに内容が変わる技術ラベルのために空けておく。

手順4: 技術をプロットし、ゾーンごとの密度で貼り方を変える

ここが、ほとんどのガイドが素通りする箇所であり、実務の時間を最も食う箇所でもある。各技術について、評価したフェーズとその中での位置に対応するx座標に、曲線そのものが定めるy座標の高さで、小さな塗りつぶしマーカーを置く。曲線から外れた位置にマーカーを置いて線で曲線につなぐのではなく、マーカー自体を曲線の上に乗せ、ラベルの方を外側に出す。

次に、各ゾーンに何個のマーカーが入ったかを数える。正しいラベルの貼り方は、この個数によって変わるのであって、全ゾーンに同じルールを当てはめるものではない。

  • 1ゾーンに1〜2個: 短い引き出し線を伴う直接ラベルで問題ない。引き出し線はまっすぐ上(曲線の下落側に近い位置にあるマーカーなら下)に伸ばし、曲線のすぐ外側にラベルを置く。
  • 1ゾーンに3〜5個: 引き出し線の長さを短・中・長と交互に変える「段差(スタガー)」を付け、各ラベルが違う高さに来るようにする。同じ横方向の帯を取り合わないようにする技法で、多くの「作り方」記事が名前を付けずに触れている部分だ。
  • 1ゾーンに6個以上(生成AI関連の市場スキャンで、ピーク期だけ技術が密集するのはよくあるケース): 段差を付けた引き出し線ではもう対応できない。狭いゾーンの上に、それだけの数のラベルを重ならずに積む縦方向のスペースがないからだ。曲線上には小さな番号マーカーだけを置き、技術名はグラフの下に番号順の凡例行としてまとめる。これは苦肉の策ではなく、実在の技法だ。ガートナー自身が公開しているハイプサイクル図も、直接ラベルでは重なってしまうほど件数が増えたフェーズでは、番号マーカーと凡例リストの組み合わせを使っている。

下の図は、同じ9件の技術(ピーク期に8件、幻滅期に1件)を、両方の貼り方で並べたものだ。

図: 同じ9件の技術(ピーク期8件・幻滅期1件)を、均等ゾーン+一律ラベル(上)と、比率ゾーン+密度に合わせたラベル(下)で並べたもの。

よく見かける失敗が2つある。1つは、混雑したゾーンのラベルだけフォントサイズを縮めて無理やり収めることだ。1フェーズだけ9ポイント、残りは12ポイントという仕上がりになり、理由を言語化できない人の目にも「ここだけ詰め込んだ」感が伝わってしまう。フォントを縮めるのではなく、貼り方そのもの(直接ラベル→段差付き→番号化)を切り替える。もう1つは、段差を付けた引き出し線同士が交差していないか確認しないことだ。マーカーがx軸上で近接している場合、段差の割り当てをマーカーの左右の並び順と一致させないと、引き出し線が交差し、どのラベルがどのドットに対応するのか本当に追いにくくなる。

現場メモ: このスライドは一度作って終わりにはならない。実際の案件では、新しいベンダーブリーフィングでチームの評価が変わるたびに、あるいは四半期ごとに市場スキャンを更新する。ゾーンごとの件数は毎回違う形になり、今期はピーク期に7件、来期は新しいカテゴリーが盛り上がって11件になる、といったことが普通に起きる。その都度、手作業で段差を付け直し、ゾーン幅を引き直すのは、ロジック自体(ゾーンごとに件数を数え、該当する貼り方を選び、幅を調整する)が単純で繰り返しだからこそ面倒な作業だ。評価軸やスコアの分布が評価サイクルごとに変わるたびに起きる成熟度モデルのスライドの崩れ方と、構造はまったく同じになる。Advisioにフェーズの定義と現在の技術リストを渡せば、ゾーンごとの件数を自動で数え、密度に応じた貼り方を選び、来期のスキャンで件数が変わっても影響を受けたゾーンだけをネイティブなPowerPoint図形として組み直す。Microsoft AppSourceに掲載されており、クライアントから評価を指摘されてピーク期の技術を幻滅期に動かすような修正も、組み直しではなくドラッグ&ドロップの通常編集で済む。

仕上げチェックリスト

  • ゾーン幅が5等分ではなく、おおよそ10-12-18-40-20の慣例比率になっている。
  • 曲線は頂点を「平滑点」に設定した1本のフリーフォーム図形で、ピークや幻滅期の底に意図しない角がない。
  • フェーズ名はx軸の下にあり、曲線の上で技術ラベルと空間を取り合っていない。
  • 各ゾーンの貼り方(直接・段差付き・番号+凡例)が、そのゾーンの件数に合っている(全ゾーン同じ貼り方になっていない)。
  • 通常のズームでラベル同士が重なったり接触したりしておらず、引き出し線も不要に交差していない。
  • マーカーのサイズとラベルのフォントサイズが、混雑したゾーンも含めて全ゾーンで揃っている。

別の市場スキャンに応用する

何をスキャンする場合でも、この4つの手順の考え方は変わらない。たとえばセキュリティ領域の技術9件を取締役会向けに整理するケースでは、黎明期に3件(まだプロダクト以前)、ピーク期に2件、過去の盛り上がりからすでに幻滅期に落ちている孤立した1件、啓発期を上る2件、生産の安定期に成熟した1件、という3-2-1-2-1の分布になることもある。これは先のAI系スキャンの例とほぼ逆の形で、単独のゾーンが番号マーカーを必要とするほど混雑することもない。この場合はどのゾーンも最大で3件なので、全ゾーンが短い引き出し線付きの直接ラベルで済む。作り方そのものは何も変わらない。変わるのは、あらかじめ決めたルールではなく、各ゾーンの件数によって決まるラベルの貼り方だけだ。このスライドが本当に試しているのは、曲線を一度きれいに描く技術ではなく、スキャンのたびに違う形で返ってくる同じ4つの手順を、毎回正しく読み直す力だ。